未だ決まらぬサザン・キングスの加入方法。南ア6チーム拡張案は遂に断念。

なんとも、お粗末な形で進んでいる南アフリカカンファレンスへのサザン・キングス受け入れ問題。この日、南アラグビー協会(SARU)と、スーパーラグビー運営母体であるSANZARの話し合いで、6チームへの拡張案は認められないことが最終的に確認されました。
ここで改めて、この問題を振り返ってみましょう。
元々は、2005年にイースタン・ケープのフランチャイズとして発足したサザン・スピアーズが、キングスの前身となっています。彼らは2007年からスーパーラグビー(当時スーパー14)入りすべく活動していましたが、様々に検討された結果、却下されています。公式には、フランチャイズの収益面での安定性が確立されていない点や、チームとしての実力がトップクラブレベルに至っていない点などが理由でした。結果、スピアーズはここで解散しています。
2009年、再びスーパーラグビー加入を目指してイースタン・ケープに設立されたのが、サザン・キングス。この年に南アフリカはブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズを迎えることになっており、その対戦相手のひとつが、彼らの初陣でした。かなり見切り発車での再スタートでしたが、これにあたってイースタン・プロヴィンスのチェーキー・ワトソンは「南イースタン・ケープの人々は、トップラグビーを渇望しているんだ」と熱い想いを語っています。
イースタン・ケープは、昔から黒人系住民の割合が非常に多いエリア。アパルトヘイト時代にはコーサ族が多く住む過激な民族闘争の舞台であり、「白人のスポーツ」たるラグビーを憎み続けてきた場所です。1995年のワールドカップ優勝による歴史的和解によりラグビーが国民全体に受け入れられてきた後も、やはりサッカーが盛んな「ラグビー空白地帯」として取り残されてきた感のある場所でした。
キングスに大きなチャンスが訪れたのは、2011年から「スーパーラグビー」に形を変えるタイミング。それまでの14チームから1チーム増えることが決まると、その座を狙って熱心な活動が続けられました。しかし、SANZARの出した結論は、オーストラリアに1チーム増やすこと。それまでのNZ5チーム、南ア5チーム、豪州4チームのバランスを考えれば、止むを得ないことだったのかもしれません。その時に発足したのが、メルボルン・レベルズでした。
南半球3カ国での全体運営を考えればキングスの落選が止むを得ないことだったとしても、南アフリカ国内では、それでは済まない状況がありました。白人主導主義によるラグビーからの黒人排除と見られないためにも、イースタン・ケープに2度目の挫折を味合わせたまま放置しておくわけにはいきません。SARUは、「既存の5チームにマイナスの影響を与えない上で」という条件付きで、「来シーズンからキングスをスーパーラグビーに受け入れる」という申し合わせをしてしまい、その上でキングスの活動を存続させました。
事実上「加入が確約された」キングスは、解散せずに活動を継続します。チーム力を高めるためにスーパーラグビーチームとの試合も行い、必ずしも相手がトップメンバーではない状態とはいえ、勝利をおさめることもしばしばでした。更に、チームはIRBネイションズカップにも参戦。この後ワールドカップにも出場したグルジア、ルーマニアなどを下して、優勝を飾りました。
一方のSARUは、キングスの受け入れに向けてSANZARとの話し合いを進めます。ところが、楽観的に考えていた南アフリカの6チーム拡張案は、真っ向から拒絶されます。スーパー14からスーパーラグビーに形態を変える際に、運営側はテレビ局や広告代理店と複雑な契約をかわしており、その中には「2015年末までは15チームによるフォーマットを守る」という規定が盛り込まれているというのが、直接的な理由でした。
困ったSARUは、現行5チームと共に対応を協議します。しかし、彼らは元々自分たちが痛みを伴うことを了承していたわけではなく「6チームに増やす以外の案は受け入れられない」という結論しか出せません。それをまたSANZARに拒否されるという堂々巡りが何度か繰り返され、今日まで宙ぶらりんの状況が続いて来ました。
今回のミーティングで、いよいよ「拡張案は絶対に受け入れられない」ことが確認されましたが、だからといってキングスに対して「ダメだったから解散、もしくはアテもなく赤字運営を続けてくれ」とは言えません。彼らに残された道は、恐らく「既存チームとの入れ替え」もしくは「既存チームの合併」しか無いでしょう。
入れ替えとなれば、最も合理的なのは「カンファレンス内で最下位チーム」の降格。現時点ではライオンズとなります。4位のチータースとは13ポイント差があり、逆転は厳しい状況。この案が通れば、彼らがスーパーラグビーから姿を消すことになるでしょう。しかし、降格となればフランチャイズを維持することは難しくなります。事実上、降格チームは解散となるでしょう。
ライオンズは、ヨハネスバーグを本拠地とする伝統あるチームです。前身であるキャッツはスーパー12発足時から参戦しており、2000年、01年にはプレーオフ進出も果たしました。この10年は低迷が続いているとはいえ、今年はカリーカップ優勝を果たして「長いトンネルに出口が見えてきた」ようなところ。何より、彼らが本拠地としているエリスパークは、あの95年ワールドカップ決勝戦で、ネルソン・マンデラとフランソワ・ピナールが握手を交わした「民族融和の象徴」とも言える場所です。あの場所がトップラグビーから姿を消す契機が、黒人エリアのラグビー振興のためだとすれば、なんとも皮肉な話になってしまいます。
合併案であれば、やはり最有力なのはチータースとライオンズの合併。元々、キャッツ時代には実質的に1つのチームだったのが、スーパー12から14になる際に分裂したようなものですし、それ以降も常に下位に低迷している両チームです。降格よりは合理的な案であるように見えますが、コストの増加による収益の減少はチーム運営をかなり苦しくすることが見えています。
「非常に複雑な問題で、簡単に答えは出ない」と話すSARUですが、このまま堂々巡りを続ける時間は残されていないのも確か。大きな決断を求められる時が近づいています。
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